インタビュー:地域との共存共栄によるサステナビリティの実現を目指して
Interview:
株式会社関西アーバン銀行 取締役会長 兼 頭取
橋本 和正 氏
地方銀行として唯一、関西の二府四県全てに店舗ネットワークを持つ関西アーバン銀行は、2016年5月30日に滋賀県と包括的連携協定を締結した。同行が地方自治体と包括的連携協定を締結するのは滋賀県が初めてだという。なぜ滋賀県なのか、そして今後どのような取り組みを展開していくのか、取締役会長兼頭取の橋本和正氏にお話をうかがった。
滋賀県のポテンシャルは群を抜いて高い
関西アーバン銀行の本店は大阪市にあるが、2010年に合併した滋賀県を主要地盤とするびわこ銀行が前身であり、県内に52店舗を展開している。滋賀県は大手企業の工場、研究所も数多く立地する有数のものづくり拠点。交通の便が良く、水も豊富であることから発展してきた。そして何より「各地で人口の減少傾向が顕著な昨今においても、県内の多くの地域で人口は増加傾向にあり、住みやすい魅力ある地域だ」と橋本頭取はいう。さらに、「県内総生産の41%を占める第二次産業を創り上げてきた熟練技術者が数多くいる」ことにも大きな可能性を見ている。大手企業や大学を擁する研究拠点であり、ユニークな中小企業が立地し、熟練技術者が住む地域、今後まだまだ成長できる土壌が滋賀県にはある。
各地域の特徴と広域ネットワークを活かす
頭取就任時に全ての支店を回ったという橋本頭取。各地域の実情に合わせて、その地域のことを一番よく知っている銀行になるという方針のもと、店舗ごとに営業戦略を策定し地域に密着してきた。地域の実情に合わせるというのは、すなわち地域に貢献していくことに他ならない。1社1社、1人1人に合わせて、産業だけでなく住環境においても、それぞれのステージに合わせて、みんなが住みやすいように取り組んでいく。ニーズやシーズのコーディネートもこれらの活動の1つだという。
地域の顔が見える関係だからこその情報は、滋賀県だけにとどまらない。関西の二府四県に展開する店舗網、親会社である三井住友銀行も含めた広域ネットワークによる販路紹介や経費削減につながるサービスを提供する企業とのマッチングなどの取り組みが、地域に密着しつつも広域に展開している関西アーバン銀行の強みであろう。
地域活性化、地方創生からサステナビリティの実現へ
滋賀県との包括的連携協定を機に、新商品・新技術の開発およびニュービジネス創出を支援する「地方創生融資ファンド(地方自治体連携型)」の取扱いを開始。「しが絆プロジェクト」では、滋賀の新しい魅力を生み出す仕事の発掘・応援をするために助成金を拠出する。また、2013年度にスタートした「関西アーバン共同研究助成金」では、既に19プラン・総額3,800万円の助成金を拠出し、優れた技術を有する中小企業の産学連携による共同研究を支援している。頭取が訴えるのは、「これらをいかに続けるか」である。「地方創生のような事業ブームから生まれた新しい仕組みを、単年で利益を出し自前で事業が展開できるように成長させていくことが重要だ」という。この地域との共存共栄を目指す姿勢が、まさにサステナビリティ実現への鍵といえよう。